はじめに
「うちの子が学校に行けなくなったのは、私の育て方が悪かったからでしょうか?」
子どもの不登校に直面し、ご自身を責めてしまう保護者の方は少なくありません。
しかし、不登校は今や小中学校だけで34万6千人を超え、社会全体で取り組むべき深刻な課題です。
この問題は、親や子どもの努力不足ではなく、いじめ、学習不安、時代背景など複合的な要因が絡み合って生じています。
本記事では、最新の統計データ(2025年11月時点)や国の支援策「COCOLOプラン」を踏まえ、保護者としてできること、そして専門家と連携して社会的自立を目指すための具体的な道筋を分かりやすく解説します。
一人で抱え込まず、ここから解決の一歩を踏み出しましょう。
不登校の現状と深刻な背景
過去最多を更新し続ける不登校の現状
最新統計データが示す深刻度
2023年度(令和5年度)の文部科学省の調査によると、小・中学校における不登校児童生徒数は34万6,482人に達し、これは11年連続で過去最多を更新しています。
特に小学校での増加が顕著であり、13万370人が不登校となっています。この数字は、在籍者全体の約3.7%に相当し、約27人に1人が不登校の状態にあることを示しています。
さらに、約半数にあたる55.0%の児童生徒が90日以上の長期欠席に至っており、不登校の長期化が深刻な課題となっています。
高校生を含めると、その総数は41万人を超え、もはや個別の家庭の問題ではなく、社会全体で取り組むべき喫緊のテーマとなっています。
また、この傾向の背景には、不登校を「休養の必要性」として捉える社会的な認識の変化も影響していると指摘されています。
不登校を引き起こす複合的な要因
表面的な理由の裏に潜む心身の不調と不安
不登校の要因は単一ではなく、複数の事象が複雑に絡み合っているのが特徴です。
文科省の調査では、「無気力・不安」が最多の理由(32.2%)として挙げられていますが、これはあくまで表面的な状態である点に注意が必要です。
その背後には、不安や抑うつ症状(23.1%)や起立性調節障害などの体調不良が潜んでいるケースが多く見られます。
特に重要なのは、心身の不調について、児童生徒や保護者の約7~8割が認識しているのに対し、教師の認識が2割弱と大きな乖離があることです。
また、発達特性(感覚過敏など)が学校生活への適応を困難にしている場合や、ネット依存や生活リズムの乱れ(23.0%)が登校意欲を奪っているケースも多く報告されています。
まずは体調や心理的な問題を優先し、根本原因の解明と適切なケアが不可欠です。
学校環境と家庭環境が複雑に絡み合う問題
不登校の要因には、学校生活に起因するものと、家庭環境に起因するものが複雑に絡み合っています。
学校生活に起因する問題としては、友人関係のトラブル(いじめを除く)や教職員との関係、学習のつまずき(学業不振15.2%)などが大きな割合を占めます。
特に、学校側が把握しているいじめは全体のわずか1.8%に過ぎず、潜在的ないじめが不登校につながっている可能性が指摘されています。
一方、家庭環境に起因する要因としては、親子の関わり方、家庭内の不和、経済的困難などが子どもの心理状態に影響を与えることがあります。
さらに、保護者(特に母親)が子どものケアに追われ、離職・退職を余儀なくされるなど、保護者自身のキャリアやメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼしている実態も明らかになっています。
これらの複合的な要因に対応するためには、家庭、学校、福祉が連携する多角的な視点が求められます。
不登校支援における核心的な課題と国の対策
支援から取り残される「約13万人の子どもたち」
支援の「接続(つなぎ)」の課題と経済的格差
不登校支援の選択肢は多様化しているものの、最も深刻な課題として浮上しているのが、支援を必要とする子どもや家庭に適切な支援が届いていない「接続(つなぎ)」の問題です。
不登校児童生徒の約4割にあたる13万人以上が、教育支援センターや民間施設など、いかなる支援機関にも相談・利用していない「無支援状態」にあることが指摘されています。
この背景には、学校と家庭の間に心理的な溝があったり、適切な支援機関の情報が届いていなかったりする現状があります。
また、支援の担い手であるスクールソーシャルワーカー(SSW)の絶対数が不足していることも、問題を深刻化させている一因です。
さらに、フリースクールは有力な選択肢である一方で、利用料が月額数万円に及ぶこともあり、経済的に困窮する家庭にとっては負担が大きく、教育機会の格差拡大につながるリスクがあります。
国が推進する「COCOLOプラン」の全貌
目標転換:「学校復帰」から「社会的自立」へ
不登校問題の複雑化に対応するため、文部科学省は2023年3月に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を策定しました。
このプランの核心は、従来の「学校復帰」を唯一の目標とする考え方から転換し、不登校児童生徒の「社会的自立」を支援するという明確な方針を示した点にあります。
COCOLOプランは、学びの場の確保、早期発見・チーム支援、学校風土の改革を3本柱として推進されており、これにより、不登校児童生徒が多様な選択肢の中で自分らしく成長し、将来的に社会で活躍できることを目指しています。
この目標転換は、不登校に対する社会的な認識を大きく変えるものであり、保護者も「学校に戻さなければならない」という重圧から解放される視点を与えてくれます。
多様な学びの場(特例校・ICT活用)の確保
COCOLOプランでは、多様な学びの場を確保するための具体的な施策が打ち出されています。
その一つが、不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成できる「学びの多様化学校」(旧不登校特例校)の設置促進です。
将来的には全国300校の設置が目標とされています。
また、学校内に相談・学習できる「校内教育支援センター」(スペシャルサポートルーム:SSR)の設置促進も進められており、2023年3月時点で全国平均46.1%の設置率となっています。
さらに、物理的な通学が困難な子どもたちのための新たな居場所として、ICTの活用が全国の自治体で広がりを見せており、アバターを介した交流は、対人不安が強い子どもでも参加しやすい利点があります。
不登校期間中に自宅や支援機関で学んだ成果を成績に反映させる出席扱いの弾力化も進められており、学びの機会の保障が強化されています。
はじめにお子さんが学校を休みがちになって、一番心配なこと。それは、将来のこと、友達関係のこと…たくさんある中でも、「勉強の遅れ」ではないでしょうか。「学校に行かない間、勉強がどんどん遅れていって、本人が一番困るのでは…」「家[…]
【保護者向け】子どもの心のSOSを受け止める具体的な支援
家庭を「安全基地」にするための心得
子どもの気持ちの受容と登校の強要禁止
保護者の役割は極めて重要であり、まず求められるのは、家庭を子どもにとって「安全基地」にすることです。
子どもの気持ちを否定せず、「休んでもよい」と伝え、ありのままを受け入れることが、心の安定につながります。
無理に登校を促したり、登校しないことを批判したりすることは、子どもの不安感を高め、状況を悪化させる可能性があるため、絶対に避けるべきです。
不登校を「心の病気」と捉え、体の病気と同様に、まずは心身のエネルギーが回復するのを待つ姿勢が求められます。
子どもの自己肯定感を高める声かけを心がけ、無理に不登校の理由を聞き出そうとせず、日常会話や趣味の共有を通じて信頼関係を構築しましょう。
親が焦らず、子どものペースを尊重することが、結果として主体性の回復と自立への第一歩につながります。
保護者自身のメンタルケアと孤立の防止
子どもの不登校は、保護者、特に母親の就労継続に深刻な影響を及ぼし、保護者自身が孤立し、多くの葛藤を抱える原因となります。
保護者が抱えるストレスは、子どもにも伝わるため、親自身のメンタルヘルスケアと感情のコントロールは非常に大切です。
親が子どもにかかりきりにならず、自身の仕事や生活、趣味などを楽しむ時間を持つことで、親子両方の心理的負担を軽減することができます。
また、「家庭の力だけで不登校を解決できないことも多い」という現実を認識し、一人で抱え込まず外部に助けを求める勇気が必要です。
自治体の相談窓口や「不登校の親の会」、LINEのオープンチャットなどのオンラインコミュニティ、児童相談所やSSWなどの専門家への相談 を積極的に活用し、孤立を防ぎましょう。
経済的困難がある場合は、就学援助や医療費助成などの制度利用も検討してください。
学校以外の学びの選択肢と情報収集
フリースクールやオンライン学習の検討
子どもの心身の状態が少し上向いてきたら、学校以外の学びの選択肢を子どもと一緒に検討することが有効です。
公的な機関である教育支援センターやフリースクールは、柔軟な学習プログラムや居場所機能を提供しており、近年はオンライン学習教材やメタバース(仮想空間)を活用した自宅から参加できるプログラム(例:カタリバのroom-K、富士ソフトのFAMcampusなど)も普及しています。
これらの学校以外の施設に通った場合でも、在籍校の校長が認めれば、一定の要件の下で出席扱いとしてカウントすることが可能です。
多様な選択肢について情報収集し、子ども本人が「行きたい」と思える場所を見つけることが、主体性の回復につながります。
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学校・外部機関との建設的な連携方法
保護者は、子どもの支援において学校との建設的な連携を維持することが不可欠です。
学校側には、担任やスクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)といった専門スタッフが配置されており、これらの専門家との定期的な面談や電話連絡を通じて、子どもの家庭での様子や現在の支援方針について情報共有を維持しましょう。
無理のない範囲での連携を心がけ、学校からの相談に対して開かれた対応をとることで、支援を得やすい関係を構築できます。
また、学校復帰を前提としない支援を望む場合は、COCOLOプランの精神に基づき、学校以外の支援機関(教育支援センター、フリースクール、放課後等デイサービスなど)と学校の間で情報共有を行い、切れ目のない支援体制を構築するよう依頼することも重要です。
経済的な支援については、東京都のように自治体がフリースクール利用料の助成を行う制度も始まっているため、居住地の制度も確認しましょう。
【支援者向け】多職種・多機関連携による支援(学校・行政・民間)
学校が果たすべき「チーム学校」の機能
校内教育支援センター(SSR)の積極的な活用
不登校対策において、学校は組織的に子どもを支える「チーム学校」の構築が求められています。
学級担任だけでなく、養護教諭、SC、SSW、管理職などが連携し、定期的な支援会議を開催することが効果的です。
その中核となるのが、校内に設置される校内教育支援センター(SSR:スペシャルサポートルーム)能動的な場所として機能させることが重要です。
SSRの整備は全国で加速しており、ここでは個別支援計画が作成・実施され、学校と家庭の橋渡し役としての機能も担います。
また、教職員は、児童生徒の心身の小さなSOSを早期に把握するため、1人1台端末を活用した早期発見の仕組みを導入し、適切な支援につなげる必要があります。
行政・NPO・民間企業による多層的支援
教育支援センターと官民連携モデルの活用
教育委員会が設置・運営する教育支援センター(適応指導教室)は、公的な受け皿であり、無料での学習支援やカウンセリング、集団適応支援を提供しています。
センターは、学校に通えない子どもに対するアウトリーチ(訪問支援)や、保護者支援体制の強化も進めています。
さらに、支援の「つなぎ」という課題解決に向け、行政(自治体)と民間(NPO)が連携する新たなモデルが加速しています。
例えば、日本財団と認定NPO法人カタリバが連携し、自治体の不登校政策を伴走支援する実証事業「不登校政策ラボ」が2025年に開始されました。
このラボでは、地域固有の課題(教育と福祉の連携、地理的制約の克服、人材不足)に対し、包括的な解決モデルを構築し、全国展開を目指しています。
行政は、このような官民連携を積極的に推進し、地域社会全体で支援ネットワークを構築することが求められています。
企業の福利厚生制度やメタバースの最新動向
不登校支援の担い手は学校や行政に留まらず、民間企業も新たな役割を果たし始めています。
企業の中には、子どもの不登校を従業員に関わる経営課題と捉え、支援に乗り出す例が増えています。
例えば、共同印刷やバンダイナムコホールディングスでは、子どもの不登校を理由とした休業や時短勤務を認める制度を導入しており、従業員のウェルビーイングと人材定着に貢献しています。
また、サイボウズ社は、不登校の親の体験談を発信し、社会全体の意識向上と企業ができる支援のあり方を模索しています。
テクノロジーの面では、NPO法人カタリバの「room-K」など、教育メタバースを活用したオンラインの居場所が普及しています。
これは、地理的制約を克服し、対人不安が強い子どもでもアバターを介して社会との接点を持つことを可能にする、現代的な支援策です。
民間企業・NPOは、教育コンテンツの開発、体験活動の提供、地域コミュニティ運営など、多岐にわたる支援を提供し、公的支援を補完・先導する役割を担っています。
放課後等デイサービス(放デイ)を活用した専門的支援
放デイの特性と不登校児への具体的な支援内容
個別支援計画に基づくソーシャルスキルトレーニング
放課後等デイサービス(放デイ)は、児童福祉法に基づく福祉サービスですが、発達特性のある不登校児にとって重要な受け皿となっています。
利用には自治体が発行する「受給者証」が必要ですが、利用料の自己負担は収入に応じて軽減されます。
放デイでは、個々の子どもの特性や課題に応じた「個別支援計画」を作成し、専門的なプログラムを提供します。
具体的な支援内容として、ルール把握や感情コントロール、他者との関わり方を学ぶソーシャルスキルトレーニング(SST)の実施は特に有効です。
また、学習支援 や、生活能力(時間管理、自己管理方法など)の向上、達成感を得られる遊びや体験活動の提供 を通じて、子どもの自己肯定感を育成し、安心できる居場所を提供します。
2024年の法改正で、放デイの不登校児への支援充実が明記され、より質の高い専門支援が求められています。
出席扱い認定のための学校との連携手順
連携体制の構築と成果の成績評価への反映
放課後等デイサービスでの活動を在籍校の出席日数として認定することは、学校長の判断に基づき可能です。
この制度を活用するためには、放デイ事業者、保護者、そして学校(特に校長)の間で、事前に十分な協議と合意形成を行うことが不可欠です。
連携に際しては、放デイ側が学校に対し、支援内容、子どもの学習状況、活動報告などを定期的に行う必要があります。
また、出席扱い認定の対象となりうる活動は、学習支援だけでなく、SSTなどのソーシャル面の活動も含まれ得ます。
さらに、文科省は2024年8月の通知で、不登校児童生徒が学校外の機関や自宅等で行う学習の成果を成績評価に反映できることを法令上明確化しました。
これにより、放デイや教育支援センターなどで取り組んだ学習成果が、公式な評価につながりやすくなり、子どもたちが学校復帰や進路選択に向けて自信を持つための重要な後押しとなります。
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まとめ
お子さんが不登校になり、親として「どうしたらいいのか」と途方に暮れているかもしれません。
しかし、ご安心ください。あなたは一人ではありません。
最新の統計では、不登校の子どもは34万人を超えており、この問題は決して個人の責任ではありません。
大切なのは、まず「休ませること」です。
家庭を批判のない安心できる「安全基地」にすることが、再スタートのための最初のステップです。
登校を強要する代わりに、子どもの話に耳を傾け、心身のエネルギー回復を待ちましょう。
また、子どもの自己肯定感を高めるために、学習面だけでなく、得意なことや興味を具体的に褒める声かけを心がけてください。
次に、「支援との接続」を目指しましょう。
不登校の保護者は孤立しやすいというデータがありますが、地域の教育支援センター(適応指導教室)、スクールソーシャルワーカー、不登校の親の会など、無料または安価で利用できる公的な相談先が多数あります。
特に、スクールカウンセラーやSSWは、学校と家庭、福祉を繋ぐキーパーソンとなります。
そして、学校以外の「学びの選択肢」に目を向けましょう。
国が推進するCOCOLOプランでは、学校復帰を唯一のゴールとせず、社会的自立を目標としています。
フリースクール、オンライン学習、発達支援が必要な場合は放課後等デイサービスなど、多様な選択肢があります。
これらの施設での学びは、校長の判断で出席扱いになる可能性もあり、子どもの主体性を取り戻す機会となります。
不登校は、お子さんが成長のために「立ち止まっている」状態です。
焦らず、多様な社会資源を活用し、お子さんらしい形で学びと社会とのつながりを再構築できるよう、共に歩んでいきましょう。
よくある質問(Q&A)
はじめにお子さんが学校を休みがちになって、一番心配なこと。それは、将来のこと、友達関係のこと…たくさんある中でも、「勉強の遅れ」ではないでしょうか。「学校に行かない間、勉強がどんどん遅れていって、本人が一番困るのでは…」「家[…]
おわりに
…ご存知でしたか?
自宅でのICT教材などを使った学習が、学校長の判断によって「出席扱い」になる制度があることを。
これは、学校に戻ることだけがゴールではなく、子どもに合った多様な学び方が認められているということです。
ただ、「どんな教材でもいいの?」という不安がありますよね。
そこで選択肢の一つとなるのが、幅広い教科と豊富な問題数を網羅した「天神」です。
「天神」は、国語・算数(数学)・理科・社会・英語の主要教科に対応しており、その内容は教科書に準拠しています。
学習の進捗状況をプリントアウトできる機能もあるため、お子さんが「これだけ頑張った」という学習記録を、学校に具体的に提示する際の資料としても活用できます。
(※出席扱いについては、必ず在籍する学校との連携・確認が必要です)
先の見えない不安の中で、「出席扱い」という形で社会とのつながりを保ち、学習の記録を積み重ねていくことは、お子さんにとっても、親にとっても、大きな心の支えになります。
将来への安心材料として、そして何よりお子さんの「学びたい」気持ちを止めないために。
在宅学習という新しい選択肢を、ぜひ一度検討してみてください。